HAREM[ハレム]:ヤングアニマル ハレム

vol.64 好評配信中!
毎月29日配信

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スペシャル

エロスな電子雑誌「ハレム」新創刊記念インタビュー第4弾!
『くだけるプリン』黒丸先生





エロスな電子雑誌「ハレム」で漫画家キャリアの新境地に挑んでくださったのが、黒丸先生です。
「ハレム」創刊記念インタビュー第4弾は、女性漫画家の視点から、女のセックスに至る一部始終を描く連載『くだけるプリン』をスタートしました黒丸先生に、連載の経緯とご自身が思うエロスについて伺いました。
めくるめく『くだけるプリン』の世界が生まれるまでとこれからをご覧あれ――。


――黒丸先生といえば『クロサギ(原案・夏原武)』が代表作ですが、「ハレム」でエロスがテーマの『くだけるプリン』を連載スタートしました。きっかけや経緯などお教えいただけますか?

黒丸 編集さんから「新しい電子雑誌を創刊するので読切を1本」という依頼をいただいたのが始まりですが、テーマがエロスで「え!?」となり、読切だったはずが連載になって「おい!?」となりました(笑)。"エロ漫画"は、漫画としてすでに一大ジャンルで読者も多く、偉大な先生方がいっぱいいる。私も読んだりはしますが、描くとなると本当に難しい。門外漢の私が「ちょっと描いてみるか」といって描けるものではないんですよね。でも編集さんによれば、「ハレム」のテーマはエロではない、「エロス」だと。「エロス」と表現しているところにこだわりがあって、編集さんの意気込みも感じましたので、私も新しい挑戦ができるかもしれないと思いました。

――黒丸先生ならではの「エロス」で描けるかなと。

黒丸 そうですね。「こういうエロ漫画を」という明確な依頼だったら難しかったかもしれないですが、私ならではのものを見せてもらえたらということだったので、それなら自分の中を掘ってみようかなと思えたのが大きかったと思います。自分でも「何が出てくるかな…?」と。

――『くだけるプリン』で「エロス」がテーマのオムニバス連載は実際にやってみていかがでしょうか?

黒丸 これまで連載では男主人公が基本で、そればかりやってきました。避けてきたわけではないのですが、女主人公で長い話というのが私はなかなか苦手で。でも私の周りには、面白い女友達や女性同業者がたくさんいるんですよ(笑)。オムニバスならそういう面白い女たちが描けるんじゃないかと。これまでにためこんだネタを総動員して、なんとか作っています。そういうネタを使える場所がいただけてよかったですし、楽しいですね。

――登場人物にはモデルがいらっしゃるのですか?

黒丸 特定の誰かをモデルにというのは一切ないですが、お酒の場でポロッと出てきた友達の一言がすごい刺激的で、その一言をふくらませてキャラを作ったり、たとえ話でうまいこと言う人の言葉をお借りしたり、などですね。みんなの飲み話にひとしきり笑った後で、一生懸命思い出してメモってます(笑)。「いつか使っていい?」って聞くと、みんな「どうぞどうぞ!」と言ってくれるのでありがたいです。

――『くだけるプリン』で難しいところ、苦労している部分はございますか?

黒丸 まずSEXシーンを描くこと自体がめちゃめちゃ難しい…! そもそも私は、これまでの作品でいっさい裸を描いてこなかったので、絵ひとつとってもすごく苦労しています。今さらながら「人体ってこうなってるんだ!」という発見がありますよね(笑)。今まで服のシワでごまかしてきたのに! SEXシーンをストーリーに違和感なく組み込むこと、SEXシーン自体の演出、そこへ至るまでに積み重ねていくエピソードのチョイスなどなど…、いつも苦労しています。微妙な感情の流れを重視した作り方も、今まであまりやってこなかったですし。1話目の主人公はあまり突飛な人物にしたくなくて、不倫をしても「気持ちはわかる」「仕方ないよね」というリアルな共感を得られるように持って行きたかった。この状況じゃもしかしたら自分も…、と読者が感じてしまうような主人公の危うさを、どうすれば引き出せるか。説得力のあるエピソードを選ぶのに苦労しました。

――黒丸先生はこれまでいろんなお話を描いてこられたと思いますが、初挑戦はまだまだあるのですね。

黒丸 日常の小さな出来事の積み重ねで、人が何かを決意したり怒ったりという物語は、実はあまり描いたことがなかったんですよね。とんでもない刑事事件が起きたり、人が死んだり――という派手なきっかけで話が展開するほうが、漫画としては簡単なんじゃないか?と思ったりしてます(笑)。

――『くだけるプリン』はオムニバス連載ですが、テーマや大切にしていることは何ですか?

黒丸 一応、"不倫がテーマで、作中にSEXシーンがある"、というルールがありまして。その上で、たとえば「女が墓場まで持って行く秘密」なんていうのが、世の中にはたくさんあると思うんですよ。もちろん男性にもあると思いますけど。不倫をテーマにした長い連載漫画だと、その秘密が「いつバレる?」「バレたら修羅場だ!」というハラハラ感が、読者にとって大きな楽しみどころだと思います。ただオムニバス連載は基本1話完結なので、そういうのをやらなくてもいい。逆に「最後までバレない不倫」を描けるのが、オムニバスならではかなと思います。うまくやって、いい思いして、ちょっと秘密抱えて生きてます、っていう人は、巷にたっくさんいると思うんですよ。怖いですけど(笑)。この連載では、そういう女の人を描けるのが楽しいですね。描いていて気付いたのは、今回の連載の登場人物で、私はあまり嫌いな人がいないなということだったんです。どうしようもない人も、心無い言葉で妻を追い込む男もいたりしますが、それぞれなんとか頑張っていて、自分なりの人生でもがいたりしていて、どのキャラクターもとても身近に感じています。そういう、地に足着いてる感は大切にしたいですね。

――SEXシーンについてはいかがですか?

黒丸 まずSEXそのものは「そもそも大したことじゃない」と思っていて、「この一夜があったから人生が変わりました!」というほどご大層なものではない、というのが私の大前提です。だから描写も割とドライだと思うんですが、そんなにロマンチックでもないSEXシーンに、どこか共感なり刺激されてもらえたらありがたいです。夫婦や恋人という特定のお相手がいてのSEXは、いずれ"作業"みたいなものになっちゃうこともあると思うんですよ。毎回「宇宙が見える!」なんてならない(笑)。でもその作業というのがむしろ尊いなと思うし、まず"お相手"がいるというのが凄いことじゃないかと。なんかもう作業だけどやっとくか、みたいな日常感にエロさを感じますね。宇宙よりも日常の方がエロい。

――一方でSEXシーンが軽くはないとも思います。ちゃんとキャラごとの「自分」が込められていたり、行為に意味がしっかりあったり。

黒丸 1話目は、そこに至るまでのエピソードをひとつひとつ積み重ねて作ったので、どうしてもSEXシーンには重要な意味が込められちゃいますよね。したいからしちゃっただけ~~という軽いノリも、世の中全然あると思うんですが。ただ1話目の"咲子(しょうこ)さん"は、かなり真面目できちんとした奥さんなので、相応の理由がないと不倫というリスクは負わないなあと。やっぱり人間、「毎日頑張ってきちんと生きているけど、なんか今日はちょっとブチギレそう」という日があると思うんですよ(笑)。ただ、女友達同士でもブチギレの解消はできて、たとえば女子会や買い物や旅行や、やろうと思えば選択肢は色々ある。でも、どうしても男とじゃないと解消されないブチギレが、きっとあるんじゃないかなと。1話目ではそういうものを描きたかったので、やっぱりシーンそのものは重いものになりました。

――読者さんからの感想はどんなものが多かったですか?

黒丸 私はグラビアが表紙の雑誌(ヤングサンデー/小学館)での連載中でも、セクシーなシーンを免除されてきたんですよ。君にそれは期待してないから、と編集部にハッキリ言われまして(笑)。だから「ハレム」の予告が出たとき、私のことを知ってくれている人たちは若干ザワついていました。でも、発売後の反応はおおむね好評だったので、ほっとしてます。ストーリーやドラマ、主人公のモノローグに共感してくれた人が多かったのが嬉しかったですね。私は裸の絵がちゃんと描けてるかってことばかりビクビクしていたんですが、「大丈夫ですよ、ちゃんとエロいです」という励まし(?)の言葉をいただきました(笑)。SEXシーンを描くにあたっては、自信がないやら恥ずかしいやらで完全に縮こまってたんですが、そういうシーンがうまい女性の作家仲間から「恥はかき捨て!」「ぶちかましてやれ!」と強烈なプッシュをもらったので、その言葉を支えにこれからもがんばります…(笑)。

――ちなみにエロ系、エロス系でお好きな漫画はございますか?

黒丸 『寄性獣医・鈴音』(春輝)です。だからびっくりしました、春輝先生と一緒に雑誌に並べるなんて。『鈴音』、すごい好きで、エロの芸術ですよね。私はあれ以上のものは無いんじゃないかと思ってるんですよ。鈴音ちゃん可愛いし。あとは『センチメントの季節』(榎本ナリコ)も好きでした。女性が描かれているのもあってか、ウェットな心理描写ありきのエロスが新鮮で。反対に、山本直樹先生の作品はドライ。でもどちらも、イケナイことをしているという罪悪感を抱かせる作品ばかりで、すごくインパクトがありましたね。

――黒丸先生にとって「エロスな漫画」というのは、どういうものでしょうか?

黒丸 そうですねえ。例えばふと出会った人が既婚者だったり、恋人がいたりという人だったら、私はその人がいたしているところを見ることはまず無いでしょうが(笑)、とはいえパートナーなり恋人なり、"誰か"としているのはまあ間違いないですよね。それって、ちょっとエロいですよね。どんなに親しい友達でも、あくまで友人の範疇を出ない私が、彼らのそういうシーンを見ることはない。でも、お相手がいるならしてるんですよ。下世話な話でアレですが、そういうのってなんかエロいなあと。私がこれまで描いてきた漫画のキャラクター達の多くも、私が描いてないだけで、どっかで誰かとしてるんじゃないかと。『くだけるプリン』では、してるシーンをちゃんと描くというだけで、私としてはこれまでの漫画も『くだけるプリン』も地続きなのかなと。

――では最後に読んでくれた方、これから読むぞという方へメッセージをお願いします!

黒丸 とても華やかなメンバーの中でかなりの地味ポジですけど、地味ポジなりに心に残るものを描いていけたらと思いますので、ぜひ一度読んでくれたら嬉しいです…!

黒丸先生、ありがとうございました!
インタビュー第5弾もどうぞお楽しみに。 

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